舌下免疫療法について

舌下免疫療法(アレルゲン免疫療法)について

舌下免疫療法(アレルゲン免疫療法)はアレルギーの原因物質(抗原)を少しずつ体内に吸収させることで、アレルギー反応を弱めていく、根本的な体質改善が期待できる治療です。治療期間は3年以上が推奨されています。約70~80%の方で効果があったとされており、そのうちの20%は症状が出なくなったと報告されています。

*初回のみ1時間程お時間がかかりますので、午前は11時まで、午後は18時までにご来院をお願い致します。

舌下免疫療法

従来の対症療法との違い

比較項目従来の対症療法舌下免疫療法
治療アプローチ症状を一時的に抑えるアレルゲンへの耐性を作る
効果の持続性薬の効果が切れると症状再発治療終了後も効果が持続する可能性
治療の頻度症状出現時に随時定期的(多くの場合、毎日)
治療期間症状がある間3~5年程度の継続が推奨
薬の使用量症状に応じて増減時間とともに減少の可能性
副作用リスク長期使用で懸念あり全身への影響が少なく、リスク低い
生活への影響症状や薬の副作用で制限あり長期的に生活の質を向上
治療の場所自宅や外出先で服薬主に自宅で実施
費用症状出現時の薬代初期費用があるが長期的にはコスト減の可能性
対象年齢全年齢(薬による)主に5歳以上
即効性ありなし(効果の発現に時間がかかる)
アレルギー原因への対応対応しない根本的な原因に対応

アレルゲン免疫療法と舌下免疫療法

従来のアレルゲン免疫療法との違い

従来のアレルゲン免疫療法との違い

投与方法と治療スケジュール

治療薬を舌の裏に1分間保持し、その後飲み込みます。その後5分間はうがいや飲食は控えます。初回の投与は副作用の有無の確認のためクリニック内で行い、その後は自宅で1日1回の服用となります。

最初の7日間は低用量のものを服用してもらい、その後問題がなければ、通常量のものを服用していきます。服薬期間は3年以上が推奨されます。

※舌下免疫療法は、初回のみ1時間程お時間がかかりますので、午前は11時まで、午後は18時までにご来院ください。

舌下免疫療法の長所

安全性が高い
注射を使用しないため、アナフィラキシーショックのリスクが極めて低い

自宅で継続可能:
毎日の通院が不要で、自宅で簡単に続けられる

痛みがない:
注射を使用しないため、痛みを伴わない

長期的な効果:
治療終了後も効果が持続する可能性が高い

薬の使用量減少:
時間とともに症状が改善し、他の薬の使用量を減らせる可能性

子供にも適している:
痛みがなく、自宅で行えるため、子供の治療にも適している

生活の質の向上:
症状の根本的な改善により、日常生活の質が向上する

副作用が少ない:
全身への影響が少なく、副作用のリスクが低い

舌下免疫療法の短所

治療期間が長い:
効果が現れるまでに数ヶ月から数年かかる場合がある

毎日の継続が必要:
効果を得るためには、毎日欠かさず続ける必要がある

初期費用:
治療開始時の費用が比較的高額になる場合がある

即効性がない:
症状の即時的な改善は期待できない

全てのアレルギーに効果があるわけではない:
現在、効果が認められているのはスギとダニのアレルゲンのみである

治療中の注意事項:
アルコールや熱い飲み物を控えるなど、生活上の制限がある

初期の局所反応:
治療開始時に口腔内の違和感や軽い腫れなどが生じる可能性

期待できる効果

症状の長期的な改善:
くしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみなどの症状が徐々に軽減

薬の使用量減少:
抗ヒスタミン薬や点鼻薬などの使用量が減少する可能性

新たな感作の予防:
他のアレルゲンに対する新たなアレルギー反応の発症を抑制する可能性

アレルギーマーチの抑制:
特に子供において、アレルギー症状の進行を抑える可能性

生活の質の向上:
症状の改善により、仕事、学業、社会生活の質が向上

睡眠の質の改善:
夜間の症状が軽減し、睡眠の質が向上する

精神的ストレスの軽減:
アレルギー症状への不安や恐れが減少し、精神的な負担が軽くなる

長期的な医療費の削減:
症状改善により、長期的には医療費が削減される可能性

自然な免疫システムの回復:
過剰な免疫反応が抑制され、より自然な免疫バランスを取り戻す

季節性アレルギーの予防:
花粉症などの季節性アレルギーの症状を事前に軽減できる可能性

舌下免疫療法の対象となるアレルギー

スギ花粉症

概要

春先に目のかゆみ、くしゃみ、鼻水などの症状が現れ、日常生活に大きな影響を与えます。舌下免疫療法は、このスギ花粉症に対して高い効果が期待できる治療法です。

開始時期

スギ花粉シーズンが終わった6月頃からの開始が最適で、遅くとも11月の下旬までに開始する必要があります。スギ花粉の飛散時期に重なる12月下旬から5月の間は開始しません。

これは、花粉飛散時期に治療を開始すると、症状が悪化する可能性があるためです。また、花粉シーズン前に十分な免疫をつけておくことで、より効果的な治療が期待できます。

鳥居薬品の舌下免疫療法専門サイト

ダニアレルギー

概要

ダニアレルギーは、ハウスダストに含まれるダニの死骸や糞などに対するアレルギー反応です。年中症状が出る可能性があり、特に湿度の高い梅雨時期や、暖房使用で室内が乾燥する冬期に症状が悪化することがあります。鼻炎やぜんそくの原因となることも多く、生活の質に大きな影響を与えます。

開始時期

季節問わず1年中開始できます。
ダニは年中家庭内に存在するため、症状の有無に関わらず治療を開始できることが大きな利点です。
詳しくは「ハウスダスト・ダニについて」をご覧ください。

ダニアレルギーの舌下免疫療法は、年間を通じて一定量のアレルゲンに暴露されることで、徐々に免疫を獲得していく治療法です。そのため、いつでも開始可能であり、患者様のライフスタイルに合わせて治療を始めることができます。

鳥居薬品の舌下免疫療法専門サイト

こんな時には相談を

  • くしゃみ、せき、鼻水、目のかゆみなどの症状を改善したい方
  • 内服薬や点鼻薬を減らしたいやめたい方
  • 毎年の花粉の季節が怖くて外出を控えてしまう方
  • 夜中に目が覚めるほどのくしゃみや鼻づまりで、睡眠の質が低下している方
  • 薬の副作用(眠気など)で仕事や学業に支障をきたしている方
  • お子さまのアレルギー症状が心配で、外遊びをさせるのをためらってしまう保護者の方
  • アレルギー症状による集中力低下で、仕事や勉強のパフォーマンスが落ちている方
  • ペットを飼いたいけれど、アレルギーのために諦めている方

対象となる患者様

  • アレルギー検査にてスギの抗体が確認されスギ花粉症と確定診断された方
  • アレルギー検査にてダニの抗体が確認されダニアレルギーと確定診断された方
  • 5歳以上の方(お子さまの場合は舌下に薬を保持出来る方)
  • 3年以上毎日服薬が継続出来る方
  • 定期的に通院出来る方(薬を処方するため月に1回程度)

アレルギー検査については、こちらをご覧ください。

対象とならない患者様

  • 花粉症の原因がスギ以外の方

(花粉症の原因となる花粉が複数ある方でも、スギのみの治療は可能です)

  • 重症の喘息を合併している方

(全身性のアレルギー反応が起こった場合、重症化する恐れがあるため)

  • 悪性腫瘍の方や抗がん剤を使用中の方、また免疫系に影響がある全身疾患を有する方

(全身性のアレルギー反応が起こった場合重症化する恐れがあるため、また免疫系の異常により薬剤の有効性、安全性に影響を与える恐れがあるため)

  • 重症の心疾患、肺疾患、高血圧の既往がある方

(全身性のアレルギー反応が起こった場合に治療で使うアドレナリンで既往症が悪化する可能性があるため)

  • 高血圧症に対するβ阻害薬を使用している方

(全身性のアレルギー反応が起こった場合に治療で使うアドレナリンの効果が減弱する可能性があるため)

  • 全身ステロイド剤を投与している方

(全身性のアレルギー反応が起こった場合重症化する恐れがあるため、又ステロイド剤により免疫系が抑制され、薬剤の効果が得られない可能性があるため)

  • 妊娠中の方、また授乳中の方

(妊娠中や授乳中の投与に関する安全性は確立していないため)

  • 65歳以上の方

(一般に高齢者は免疫機能が低下しているため、十分な治療効果が得られない可能性や副作用がより強くでる可能性があるため)

治療の流れ:初診から症状改善まで

初診時とアレルギー検査

詳細な問診:
アレルギー症状の程度、発症時期、生活環境などについて詳しくお伺いします。

アレルギー検査:
血液検査(特異的IgE抗体検査): 特定のアレルゲンに対する抗体量を測定します。

総合診断:
検査結果と問診内容を総合的に判断し、舌下免疫療法の適応があるかを診断します。

治療計画の説明:
適応がある場合、治療の詳細、期間、予想される効果、注意点などをご説明します。

投与開始とトラブル時のサポート

初回投与:
医師の監督下で初回の舌下液の投与を行います。30分程度の経過観察を行い、副反応がないことを確認します。

自宅での投与方法指導:
正しい投与方法、保管方法、注意点について詳しく説明します。

副反応への対応策:
起こりうる副反応とその対処法について説明し、必要に応じて対症薬をお渡しします。

定期的なフォローアップ:
治療開始後1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月など、定期的な診察を行い、症状の変化や副反応の有無を確認します。

治療の継続期間

標準的な治療期間:
通常、3〜5年の継続が推奨されます。

治療の調整:
症状の改善状況に応じて、投与量や頻度を調整することがあります。

生活指導:
アレルゲン回避の方法や、生活習慣の改善についてアドバイスを行います。

長期的なフォローアップ:
治療終了後も定期的な受診をお勧めし、症状の再発がないか確認します。

副作用

頻脈、不整脈、血圧低下などの循環器
主な副作用としては、口内炎や舌の裏の腫れ、口の中の腫れなど、のどの痒み、耳の痒み等があります。重大な副作用としてはショックやアナフィラキシー等があります。

※アナフィラキシーは多くの場合服用30分以内で下記症状などが見られます。

  • 蕁麻疹などの皮膚症状
  • 腹痛、嘔吐などの消化器症状
  • 息苦しさなどの呼吸器症状
  • 頻脈、不整脈、血圧低下などの循環器症状
  • 意識の混濁などの神経症状

このような症状が見られた場合(疑いも含む)直ちに救急車を呼んでください。

*初回のみ1時間程お時間がかかりますので、午前は11時まで、午後は18時までにご来院をお願い致します。

よくある質問

一般的に3〜5年の継続が推奨されています。多くの患者さんは1年目から症状の改善を感じ始めますが、長期的な効果を得るためには3年以上の継続が望ましいとされています。

治療開始初期は従来の薬を併用することが多いですが、症状が改善するにつれて薬の使用量を減らしていくことができます。ただし、完全に中止できるかどうかは個人差があります。

はい、一般的に5歳以上のお子様から受けることができます。ただし、お子様の理解力や協力度合いによって、医師が個別に判断します。

軽度の口腔内の痒みや腫れなどが初期に起こることがありますが、多くの場合は一時的です。重篤な副作用はまれですが、万が一の際は速やかに対応いたします。 かゆみや腫れを感じる場合は、口腔内保持が1分経過していなくても吐き出してもらうようにお願いしております。(吐き出し法)

いいえ、初回と定期検診以外は自宅で治療を行います。通常、1ヶ月に1回程度の通院で、状態が安定した患者様は2か月に1回程度の通院となります。

スギ花粉症とダニアレルギーの舌下免疫療法は保険適用です。自己負担額は患者さんの保険種類や年齢によって異なりますが、月々数千円程度が一般的です。

現在の日本では、スギ花粉とダニに対する舌下免疫療法が認可されていますが、同時に両方の治療を開始することは推奨されていません。副作用が出た場合どちらが原因であるか判断がつかないことや、副作用が強くでる可能性があるからです。まず優先度の高い方から始めるたのち、症状が安定した時点で次の治療を開始することは可能です。

はい、通常の生活を送ることができます。ただし、投与後30分程度は激しい運動や飲食を避ける必要があります。

「完治」という表現は難しいですが、多くの患者さんで症状が大幅に改善し、薬の使用量が減少します。長期的に効果が持続する方も多くいらっしゃいます。

スギ花粉症の場合、花粉の飛散時期を避けて6月頃から開始するのが理想的です。ダニアレルギーは年中開始可能です。

新規に開始することは推奨されませんが、既に治療を行っている場合は継続可能な場合があります。ただし、個別の状況に応じて慎重に判断する必要があります。

舌下免疫療法は舌の下にアレルゲンを含む液剤を滴下し、皮下免疫療法は皮下に注射します。舌下免疫療法の方が安全性が高く、自宅で継続できる利点があります。

症状が激しい時期の開始は避けます。症状が落ち着いている時期に開始するのが理想的です。

基本的には問題ありませんが、投与の前後30分程度は控えることをお勧めします。アルコールが粘膜を刺激し、吸収に影響を与える可能性があるためです。

はい、継続可能です。ただし、薬の持ち込みに関しては事前に確認が必要です。長期の場合は、医師に相談の上、必要量を処方してもらうことをお勧めします。

個人差がありますが、多くの方は半年から1年程度で効果を実感し始めます。ただし、十分な効果を得るためには3年以上の継続が推奨されています。

可能な限り中断せずに継続することが望ましいですが、やむを得ない場合は医師に相談の上、適切な再開方法を検討します。

はい、多くの場合、従来の薬物療法と併用可能です。ただし、他の免疫療法との併用については、医師と相談の上で判断する必要があります。

発熱や喉の痛みがある場合は、一時的に治療を中断し、回復してから再開することをお勧めします。判断に迷う場合は、必ず医師に相談してください。

アレルギーの発症には遺伝的要因と環境要因が関与します。舌下免疫療法を受けることで親のアレルギー症状が改善しても、子供へのアレルギーの遺伝的リスクそのものは変わりません。ただし、親の症状が改善することで、子供の生活環境が良くなり、結果としてアレルギー発症リスクが低下する可能性はあります。