かぜ・発熱の診療(風邪などのウィルスや細菌の感染症の診療)
風邪の諸症状は発熱、くしゃみ、鼻汁、鼻閉、咽頭痛、咳、腹痛などがありますが、その中でも、くしゃみ、鼻汁、鼻閉、咽頭痛は耳鼻咽喉科の専門領域の症状です。咳も鼻汁がのどに流れ込むことによって起こるものや気管や肺の炎症によるものがありますが、ファイバースコープによる詳細な診察を行う事によって、鼻汁の流れこみや気管の炎症が確認できます。ですから肺炎によるひどい咳や腹痛を伴う症例を除くとむしろ耳鼻咽喉科のほうが風邪の診察に適していると言えます。
言うなれば『風邪の診察は耳鼻科の領域です』とも言えます。
治療方針
まず問診の後、鼻やのどの詳細な診察を行い病巣を特定します。一般に風邪と言われる疾患の原因はウイルスによるものであり、ウイルス疾患は対処療法で対処していくものが標準的な治療です。しかし、中には副鼻腔炎や扁桃炎などを併発している場合もありますので、その場合は細菌感染が原因となるので抗生剤での治療が必要となります。その確認が耳鼻咽喉科の専門領域なのです。ただし中にはなるべく抗生剤は飲みたくないと考えている患者様もいらっしゃいます。そして、治療期間は長くなりますが、必ずしも抗生剤を飲まなければ治らないわけではない場合もありますので、気になることがある時は遠慮なく言ってください。いつでも相談の上、治療方針を決めさせていただいております。
今すぐ病院に行くべき?緊急度チェック!
緊急性の高い症状
呼吸困難、意識障害、高熱が続く、胸の痛み、痙攣など
→ すぐに救急車を呼ぶか、救急外来を受診
至急受診が必要な症状
高熱、強い頭痛、嘔吐、脱水症状など
→ 至急病院を受診
明日以降で良い症状
軽い発熱、咳、鼻水など
→ 家庭でのケアを試み、改善しない場合は病院を受診
風邪と発熱について
症状だけで素人が自己診断するのは危険です。風邪、新型コロナウイルス感染症、インフルエンザの症状は似ていることがあり、素人判断は危険です。
くしゃみ、鼻水、喉の痛み、咳、発熱などの症状がある場合、自己診断せずに医療機関を受診しましょう。特に、高熱が続く、呼吸が苦しい、強い倦怠感がある場合は早めに受診が必要です。
味覚・嗅覚の異常を感じた場合は、新型コロナウイルスの可能性もあるため、必ず医療機関に相談しましょう。
どの病気であっても、適切な診断と治療が重要です。症状が気になる場合は、ためらわずに医師の診察を受けてください。
自己判断は避け、専門家の助言を求めることが大切です。体調不良時は無理をせず、周囲への感染拡大を防ぐためにも、まずは医療機関に相談しましょう。
風邪の原因と感染経路
風邪は、そのほとんどがウイルス感染によって引き起こされます。数百種類ものウイルスが風邪の原因となることが知られており、代表的なものとしてはライノウイルス、コロナウイルス、アデノウイルス、RSウイルスなどが挙げられます。これらのウイルスは、感染者の咳やくしゃみ、会話などによって空気中に飛散した飛沫を吸い込んだり、ウイルスが付着した手で目や鼻、口を触ったりすることで感染します(飛沫感染、接触感染)。
ウイルス感染と細菌感染の違い
風邪は主にウイルス感染ですが、稀に細菌感染が原因となる場合や、ウイルス感染に続発して細菌感染を起こす場合があります。ウイルスは自己増殖能力を持たず、人の細胞に寄生して増殖するため、抗菌薬(抗生物質)は効果がありません。細菌は自己増殖能力を持つため、抗菌薬が有効です。細菌感染による風邪は、ウイルス感染による風邪に比べて症状が重くなる傾向があり、高熱や膿性の鼻水、強い喉の痛みなどを伴うことがあります。医師の診察のもと、適切な治療を受けることが重要です。
新型コロナウイルス感染症との関連
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)も、風邪と似た症状を引き起こすことがあり、初期症状だけでは区別が難しい場合があります。発熱、咳、倦怠感などの症状に加え、味覚や嗅覚の異常を感じた場合は、新型コロナウイルス感染症の可能性も考慮し、医療機関への受診、または保健所などへご相談ください。検査が必要となる場合もあります。
病院の選び方:内科、耳鼻咽喉科、小児科
内科
風邪の全身症状(発熱、倦怠感、頭痛など)が強い場合、腹痛や頭痛などが強い場合、または他に持病がある場合は内科を受診しましょう。
耳鼻咽喉科
咳や痰などの呼吸器症状が中心の場合、鼻水、鼻づまり、喉の痛み、耳の痛みなど、耳鼻咽喉科領域の症状が強い場合は、耳鼻咽喉科の受診が適切です。特に、中耳炎や副鼻腔炎などが疑われる場合は、耳鼻咽喉科専門医の診察を受けることをお勧めします。
小児科
15歳未満のお子様は小児科を受診してください。小児科医は子供の成長・発達段階を理解しており、適切な診断と治療を提供できます。
風邪の治療方法と対処法
風邪の治療は、残念ながら特効薬がなく、主に症状を和らげる対症療法が中心となります。つらい症状を緩和し、自然治癒を促すことが大切です。
市販薬と処方薬の使い分け
風邪薬には、市販薬と処方薬があります。市販薬は、比較的軽い症状の場合に利用できます。ドラッグストアなどで手軽に購入できますが、ご自身の症状に合った薬を選ぶことが重要です。パッケージの記載をよく読み、用法・用量を守って服用しましょう。複数の症状に対応した総合感冒薬や、特定の症状に特化した薬など、様々な種類がありますので、薬剤師に相談するのも良いでしょう。
症状が重い場合、長引く場合、または他の病気の疑いがある場合は、医療機関を受診し、医師の診察を受けて適切な処方薬を服用するようにしてください。自己判断で市販薬を長期間服用することは避けましょう。
当院では、患者様の症状に合わせて適切な薬を処方いたしますので、お気軽にご相談ください。特に、耳鼻咽喉科領域の症状(鼻水、鼻づまり、喉の痛み、咳など)が強い場合は、耳鼻咽喉科専門医の診察を受けることをお勧めします。
家庭でできる風邪の対処法
医療機関を受診する以外にも、ご家庭でできる風邪の対処法を実践することで、症状の緩和を図り、回復を早めることができます。
水分補給:
風邪の時は、発汗や鼻水などによって体内の水分が失われがちです。こまめな水分補給を心がけ、脱水症状を防ぎましょう。温かい飲み物は、喉の痛みを和らげる効果も期待できます。
栄養のある食事:
バランスの良い食事を摂ることで、免疫力を維持し、回復を早めることができます。消化の良いものを選び、無理なく食べられる量を摂取しましょう。
適切な室温・湿度:
室温を適切に保ち、加湿器などを使用して湿度を上げることで、鼻や喉の乾燥を防ぎ、症状の悪化を防ぎます。乾燥はウイルスが活性化しやすくなる環境を作り出しますので、特に注意が必要です。
安静:
十分な休息をとることで、体の回復力を高めることができます。無理に活動せず、ゆっくりと休養しましょう。
解熱剤の種類と正しい使い方
発熱がある場合は、解熱剤を使用することで症状を緩和することができます。解熱剤には、アセトアミノフェンやイブプロフェンなど、いくつかの種類があります。それぞれ作用機序や副作用が異なりますので、薬剤師や医師に相談し、ご自身の症状や体質に合った薬を選ぶようにしましょう。また、用法・用量を必ず守り、過剰摂取や長期連用は避けてください。
特に、小児や高齢者、持病のある方は、解熱剤の使用について医師や薬剤師に相談することが重要です。
ご自身の症状をよく観察し、適切な対処法を行うようにしましょう。そして、少しでも心配なことがあれば、ご遠慮なく医療機関を受診してください。
重症化を防ぐために
風邪は、適切なケアを行えば多くの場合自然に治癒しますが、まれに重症化し、肺炎や気管支炎、中耳炎、副鼻腔炎などを併発する可能性があります。特に、免疫力の低い乳幼児や高齢者、基礎疾患のある方は注意が必要です。
肺炎やインフルエンザの可能性
風邪の症状が長引く、あるいは急激に悪化する場合は、肺炎やインフルエンザなどの可能性も考慮しなければなりません。初期症状は風邪と似ているため自己判断は難しく、医療機関を受診して適切な検査を受けることが重要です。特に、高熱が続く、息苦しさを感じる、胸の痛みがある、意識が朦朧とするといった症状が現れた場合は、速やかに医療機関を受診してください。
咳や鼻水が続く場合も、放置すると細菌感染を起こし、副鼻腔炎や中耳炎に発展することがあります。耳鼻咽喉科では、鼻や耳の状態を詳しく診察し、適切な治療を行いますので、症状が改善しない場合はご相談ください。
重症化のサイン
風邪の重症化を示唆するサインを見逃さないようにしましょう。以下のような症状が現れた場合は、重症化の兆候かもしれません。
※これらの症状が現れた場合は、直ちに医療機関を受診するか、救急車を要請してください。
医師への相談が必要な症状
少しでも体に異変を感じたり、不安な場合は、自己判断せずに医師に相談することをお勧めします。特に、以下のような症状がある場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
早期発見・早期治療が、重症化を防ぐ鍵となります。ご自身の体と向き合い、適切な対応を心がけてください。
お子様の風邪と発熱
お子様の風邪は、急な変化に注意が必要です。特に小さなお子様は、自分で症状を訴えることが難しいため、保護者の方が注意深く観察することが重要です。
小児科受診のタイミング
お子様の年齢や症状によって、受診のタイミングは異なります。
新生児・乳児(0歳〜1歳頃):
この時期は免疫力が未発達なため、軽微な症状でも重症化しやすい傾向があります。38℃以上の発熱、機嫌が悪い、ミルクの飲みが悪い、呼吸が速い、ぐったりしているなどの症状が見られたら、早めに小児科を受診しましょう。特に、生後3ヶ月未満の発熱は緊急性が高い場合があります。
幼児(1歳〜6歳頃):
比較的風邪をひきやすい時期です。38.5℃以上の発熱が続く、水分が摂れない、嘔吐や下痢を繰り返す、呼吸が苦しそう、けいれん、意識がもうろうとしている場合は、速やかに小児科を受診しましょう。普段と比べて元気がなく、遊ばない、眠りがちといった様子も要注意です。
学童期(6歳〜12歳頃):
ある程度自分で症状を伝えられるようになります。高熱が続く、強い頭痛、嘔吐、咳がひどい、食欲がない、ぐったりしている場合は、小児科を受診しましょう。
上記はあくまで目安です。少しでも気になることがあれば、ご遠慮なく小児科医にご相談ください。耳鼻咽喉科医として、鼻水、鼻づまり、中耳炎など、耳鼻咽喉科領域の症状が強い場合は、当院でも診察・治療が可能です。必要に応じて、連携している小児科専門医へのご紹介も行っております。
親ができる家庭内でのケア
ご家庭では、以下の点に注意して、お子様の症状を和らげてあげましょう。
水分補給:
こまめに水分を摂らせて脱水を防ぎましょう。母乳やミルク、経口補水液、麦茶などがおすすめです。ジュースやスポーツドリンクは糖分が多く、下痢を悪化させる可能性があるので控えましょう。
冷却:
熱が高い場合は、冷却シートやぬれタオルなどで体を冷やしましょう。わきの下、首、足の付け根などを冷やすのが効果的です。
室温・湿度の調整:
部屋の温度と湿度を適切に保ちましょう。乾燥しすぎると、鼻や喉の粘膜が乾燥し、症状が悪化することがあります。加湿器を使用したり、濡れタオルを干すなどして、湿度を保ちましょう。
安静:
十分な睡眠と休息をとりましょう。
解熱剤:
必要に応じて、医師の指示に従って解熱剤を使用しましょう。市販の解熱剤を使用する場合は、年齢や体重に合った適切な量を守ることが重要です。
抱っこ紐の使用:
抱っこ紐を使用する際は、お子様の呼吸を妨げないように注意しましょう。特に、発熱している場合は、お子様の体温が上がりすぎないように、通気性の良い抱っこ紐を使用するか、こまめに様子を確認することが重要です。
早めの対応が必要なケース
以下の症状が見られる場合は、重症化している可能性がありますので、すぐに医療機関を受診してください。
お子様の健康状態は刻々と大人が思うより早く変化します。保護者の方は、お子様の状態を注意深く観察し、少しでも異変を感じたら、迷わず医療機関に相談しましょう。
効果的な風邪予防法
うがい・手洗いの正しい方法
ウイルスや細菌は、口や鼻、目などの粘膜から体内に侵入します。特に、手は様々なものに触れるため、ウイルスが付着しやすい場所です。こまめな手洗いとうがいは、これらのウイルスや細菌を洗い流し、感染を防ぐための基本的な対策です。
手洗い:
石鹸をよく泡立て、手のひら、手の甲、指の間、爪の間、親指の付け根、手首までしっかりと洗いましょう。流水で洗い流し、清潔なタオルで拭きましょう。アルコール消毒液も有効です。
うがい:
水道水で十分です。口の中全体をすすぎ、ガラガラとうがいをしましょう。鼻うがいも効果的ですが、正しい方法で行わないと副鼻腔炎などを引き起こす可能性があるので、耳鼻咽喉科医にご相談ください。
十分な睡眠とバランスの取れた食事
免疫力を高めるためには、規則正しい生活習慣とバランスの取れた食事が重要です。
睡眠:
睡眠不足は免疫力を低下させます。毎日同じ時間に寝起きし、十分な睡眠時間を確保しましょう。
食事:
免疫機能を維持するために必要な栄養素をバランスよく摂取しましょう。特に、ビタミン、ミネラル、タンパク質が重要です。
咳エチケットとマスクの正しい使い方
咳やくしゃみをする際は、口と鼻をティッシュや肘の内側で覆い、飛沫の拡散を防ぎましょう。使用したティッシュはすぐにゴミ箱に捨てましょう。
マスクは、ウイルスを含む飛沫の吸い込みを防ぎ、感染リスクを低減する効果があります。正しく着用することで効果を発揮しますので、鼻と口を完全に覆い、隙間がないようにフィットさせましょう。また、マスクは定期的に交換し、使用済みのマスクは適切に廃棄してください。
ワクチン接種:インフルエンザワクチンの効果、種類、接種時期など
インフルエンザは、風邪よりも重症化しやすく、肺炎などの合併症を引き起こす可能性があります。インフルエンザワクチンは、インフルエンザウイルスに対する抗体を作ることで、発症を予防したり、重症化を防いだりする効果が期待できます。接種時期やワクチンの種類など、詳しくはかかりつけ医にご相談ください。
耳鼻咽喉科では、風邪、インフルエンザ、アレルギー性鼻炎など、様々な症状に対応しています。少しでも気になる症状があれば、お気軽にご相談ください。